座間市手をつなぐ育成会の沿革

「座間市手をつなぐ育成会」は、神奈川県座間市で昭和44年より活動する知的障害児・者の当事者・家族の会です。

 「全日本手をつなぐ育成会連合」「神奈川県手をつなぐ育成会」の下部組織として、知的障害児者支援の為の活動を行ってきました。

 

 養護学校を卒業しても通う場所が無かった昭和50年代に育成会が作った地域作業所「えのきの里」(現在は地域活動支援センター)は市内初の民間事業所として利用者・保護者の深い信頼を得て現在も継続中です。

 利用者増に伴い8年後には、えのきの里の実践をふまえ、地域作業所「おおきの里」(現就労継続支援B型事業所「さくらんぼ」)も開所しました。

 えのきの里が市北部に所在しているのに対し、おおきの里は市中央に位置しており、通所の選択肢が増え、現在では両事業所ともに若干の所在地変更がありましたが、それぞれに新家屋を得て今日に至っています。

 育成会の前身「手をつなぐ親の会」時代からの座間市における本団体の存在意義は、就学猶予、免除から全員就学を実現させ、学校教育修了後の知的障碍者の働く場としての地域作業所の創設という我が国の知的障碍者福祉の歴史と重なり、そのパイオニア的役割を果たしてきたことではないかと思います。

 平成元年に開所した生活寮「いのうえホーム」の働きも、現在はその運営を閉じてはいますが、当時は何の公的支援のない状態にあって12年という長きに渡り、家族的環境の中、利用者が親元を離れ自立度を高めそこを巣立ってゆくという大きな成果を得ることが出来ました。
いのうえホームの試行的実践は知的障碍者の親亡き後を考える時、大きな入所施設ではなく、住み慣れた地域で家族的雰囲気のもと自立生活を送ること、すなわち現在のケアホーム、グループホームの前身を具現化したと言うことができるでしょう。
 就学前の早期療育、全員就学に向け地域の学校における特学(現支援級)の設置、市内への養護学校開設、学校卒業後の働き場所としての地域作業所づくり、生活寮の試みと、当法人は、本市における知的障碍者の地域生活支援の先がけとしてこの40年間歩み続けてきたと言うことが出来ます。
 その様な経緯からも現存している2つの事業所はそれぞれの所在地周辺の自治会、地区社協、民生委員等々地域の方々と深く交流し、地域に根ざした運営がされているというのも特徴の1つであります。
 育成会という親の会は、古くは社会の無理解との闘いと開拓の精神を今後も引きつづき、地域の方々の様々な支援を受けながら新たな取り組みへと拡げるエネルギーをもつのが最大の特色となっていると思います。

 

 平成となり法制度の改革により、事業所運営の為に法人格が必要となった為、別組織「NPO法人座間市手をつなぐ育成会」を設立し、地域活動支援センターと就労支援B型という2つの事業を行っていますが、役員等は同じ母親らが手弁当で運営しています。

 開所から30年を経過し、利用者さん、保護者さんの高齢化が顕著になってきまました。加えて地域活動支援センター「えのきの里」は徒歩通所の利用者が多い一方、就労支援「さくらんぼ」は送迎を必要とする利用者が増加している現状があります。従いまして、今後の事業継続の為には送迎支援というところにも力を入れてゆく必要性を強く感じています。
 作業面でも、「えのきの里」はさをり織り・牛乳パック再生ハガキ作り等々自主製品が中心であるのに対し、「さくらんぼ」はそのほとんどが企業からの受注作業で占められています。現在は常時6社からの作業を請け負っていますので、日々の納品の効率を上げることも課題の1つとなっています。
 いずれにいたしましても両事業所ともに、育成会が運営母体となっているという起源からか、大変家庭的な雰囲気のもとに利用者数が10~15名という小規模ゆえの利点を生かしたきめ細やかな対応でかわらぬ評価が得られています。